公共事業を変える新しい取り組み「グリーンインフラ」。国内の政策動向などを紹介した前回の記事に続いて、第2回では海外の事例を取り上げる。

書籍 <a href="https://www.amazon.co.jp/dp/482223522X/" target="_blank">「決定版!グリーンインフラ」</a>。2月中旬から検索可能な電子版も発売している
書籍 「決定版!グリーンインフラ」。2月中旬から検索可能な電子版も発売している

 海外には都市スケールでグリーンインフラを実践している地域があり、日本にとって学ぶべき点は多い。ここではグリーンインフラ先進地の一つであるシンガポールの取り組みを紹介する。

 日経BP社が1月24日に発行した書籍「決定版!グリーンインフラ」ではシンガポールのほかにも、米国ニューヨーク市のハリケーン・サンディの復旧プロジェクトや、ポートランド市の敷地・街区スケールの取り組み、ロンドンのグリーングリッド計画、ニカラグアでの生態系を活用した防災・減災手法など、多数の海外事例を掲載している。

水のデザイン・ガイドライン

 日本では、単一機能の構造物を主体としたグレーインフラを整備し、都市の脆弱性の低減に努めてきた。しかし、近年は気候変動に伴う豪雨による水害が多発している。これは日本のみならず、今後、世界中で気候変動に伴う災害の頻発が予想される。多くの人が居住する都市部では、不確実な未来に向けてグリーンインフラを都市スケールで戦略的にどう展開するかについて真剣に考える時代に突入したと言える。

 ここでは、都市スケールのグリーンインフラの適用を推進するための一つの手法であるデザイン・ガイドラインに着目し、大きな成果を上げているシンガポールの「ABC水のデザイン・ガイドライン」とその中核プロジェクト「ビシャン・パーク」について詳しく見ていく。